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能登半島で見てきたこと


埼玉の大学生による被災地支援ボランティア体験談

J:COM安心安全チーム、埼玉担当の和田です。

今年、2024年の元日に発生した能登半島地震。
テレビに映る被災地の様子は、災害の影響が少ない埼玉県では実感がわきにくいものでした。
発災から半年。報道が少なくなりつつある現在でも、埼玉県から現地へ支援活動に向かう大学生は後を絶ちません。

彼らは何を見て、どんな体験をしてきたのでしょうか?

⽥畑璃乃さんと塚本陽⾹さん(埼玉県立大学キャンパスにて)

今回は、越谷市の社会福祉協議会から声がかかったことをきっかけにボランティア活動に飛び込んだ、埼玉県立大学社会福祉子ども学科2年生の塚本陽香さん。そして同学の4年生、田畑璃乃さんにお話を伺いました。

メディアでは伝わりにくい被害

塚本さん「能登の町を見て、衝撃を受けました。知ってはいたものの、地面の変形が激しく、外からは無事に見える家でも中は手の付けようがない状態で、自分の眼で見たとき、悲しさがこみ上げてきました。実際に行ってわかることは、他にもあります。住宅は、窓や扉の枠がすこし歪んだだけでも隙間風が入ってきて、とても住める状態ではなくなります。こういうことは、メディアではなかなか伝わらないことです」

画像提供:埼玉県立大学 川田虎男研究室

田畑さん「テレビで見た景色と大きく違うことに驚きました。能登町白丸地区の津波被害は想像より大きく、海から100Mほども距離があるのに骨組みしか残っていない家を見ました。2月に行った時は重機や資材を運ぶためのトラックなど、支援のための道具が不足しており、すぐにでも片付けをしなければならない緊急性が高い家が多かったです」

画像提供:災害福祉学生支援ネットワークSAITAMA

「申し訳ない」が解決を遅らせる

塚本さん「災害ボランティアセンターのボランティアスタッフとして、ボランティアニーズを収集するために、『困りごとはありませんか?』と聞いて回るうち、あることに気がつきました。それは『他人に手伝ってもらう申し訳なさから、ボランティアを頼まない』と考えている被災者が一定数いる事。そもそも支援の存在自体を知らない人もいました。助けを受けることができる、と私たちの側から知らせることの大事さを感じました」

画像提供:災害福祉学生支援ネットワークSAITAMA

ボランティアにできることは力仕事だけじゃない

田畑さん「現地では高齢者の方にボランティアをお願いされる機会が多かったです。どうすればいいんだ…と困難を抱えている様子でしたが、わたしたち大学生が行くと孫娘のようにかわいがってくれ、少しでも力になれるなら嬉しい事でした」

塚本さん「津波が押し寄せたお宅にうかがい、清掃をした時の事です。『アルバムはもういいの。水浸しになっているし、仮設住宅にも入りきれないから、ゴミにしちゃって』と写真アルバムの破棄を頼まれました。私は『どういう思い出があるんですか?』と聞くことにしました。あきらめて欲しくない、その写真に込められた想いを取り戻していただくことで、ゴミだと思わず大切にしてほしいと思ったからです。私の問いかけの影響かは分かりませんが、最終的にはアルバムの破棄を思い留めてくれたようです。わたしのように外から来たボランティアと話すことで、現地で被災した人にとって、落ち込んだ気分を切り替えるキッカケになるのかもしれません」

埼玉に戻って考えた事

塚本さん「こちらに帰ってきてからは、能登を支援する学生ボランティア団体に参加することを検討したり、県立大の仲間を集めてサークルを立ち上げたりしたいなあと考えています。支援の仲間を増やしたいです」

田畑さん「被災地の現状を見続けたいので、また能登に行きたいです。
そして埼玉で情報を発信して、防災意識を高めていきたいです。私自身、自分の防災バッグを見直したりもしています」

取材後記

2月から5月にかけて何度か能登に足を運び、被害状況を調べる仕事、家具の搬出やブロック塀の片付け、ボランティア要請の情報をパソコンに入力するなどの活動をしてきた二人。
思い切って飛び込んだボランティア活動によって得た様々な体験、想い、そして能登での体験から、埼玉での暮らしにおいても防災のことを考えるようになったそうです。

この記事は、2024年6月23日 埼玉県防災学習センターで開催された、聖学院大学、立正大学、埼玉県立大学の3学合同「能登半島支援学生ボランティア発表会」と、その後の個別取材を交えて構成しています。

取材協力 埼玉県立大学 川田虎男准教授
     聖学院大学ボランティア活動支援センター

https://www.seigakuin.jp/life/seig-volunteer/