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区民は約74万人。救急車の数は計12台。

J:COM安心安全チーム 、東京担当の市川です。

「救急車の適時・適切な利用の促進」については、みなさんも聞いたことがあるかもしれません。
いま問題となっている「救急車のひっ迫」や「救急需要の増大」などについて、練馬消防署管内で救急を担当するお二人に、できるだけ深掘り取材させていただきました。

9月9日は「救急の日」 ~改めて考える救急車のひっ迫~

昨年(令和5年)中、東京消防庁管内で救急車が出動した件数は… 91万8,311件過去最多を記録しました。
一日平均2,516件、34秒に1回の割合で出動したことになります。

今年(令和6年)9月4日現在の速報値によると… すでに63万4,491件!(昨年同期比17,506件増) 昨年を上回るペースで推移しています。

昨年、救急搬送されたものの「軽症」と診断された人の割合は50%以上を占めています。
「早く119番通報したから軽症で済んだ」という数字も含まれますが、その119、本当に緊急ですか?というケースが多いのは言うまでもありません。

東京消防庁 練馬消防署 富田さん

生命の危機が迫っている人を1秒でも早く病院へ

―最近、困った119番は?
富田さん:若い方で『夜中に精密検査をしてくれる病院を探してほしい』という緊急性のない通報。逆に、高齢者に多いのが「我慢」。緊急性があるのに、救急車を安易に呼んではいけないと思ってしまっているケースがあります。「3日間、食事もとれず体調不良だった。体調が悪くて歩けないようであれば、救急車をもっと早く呼んでほしかった…」。

急な病気や怪我で 救急車を呼ぶか どうか迷った時は…#7119

富田さん:相談医療チーム(医師、看護師、救急隊経験者等の職員)が24時間、年中無休で電話対応している「東京消防庁救急相談センター(#7119)」と、症状の緊急度を自身で判断できる冊子「東京版救急受診ガイド」があるのでご活用を。

猪俣さん:先ほどの「我慢」してしまう高齢者のように、#7119には、隠れた重症者を見つけ出し、救急医療につなげる効果もあります。

練馬区には3つの消防署がある(練馬・光が丘・石神井) ※写真は練馬消防署

令和3年以降、救急車の平均到着時間が延伸している

東京消防庁管内には、274台の救急車があります。(ことし4月1日現在)
出場件数が増加すると、現場から遠い救急車が出場することが増え、
一分一秒を争う現場への到着が遅れる恐れがあります。

東京消防庁HP 救急車は限りある資源

―救急車の需要過多は、現場の方々の疲労にもつながるのでは?

富田さん:隊長だとほぼ一日中、出ずっぱりになってしまうことも。

―救急隊員さん、食事をとる時間は?

富田さん:救急車の中でおにぎりをほおばって、次に備えている状況です。制度としては病院の食堂などで食事することはアリなのですが…。

東京消防庁 練馬消防署 猪俣さん

猪俣さん:救急隊員は、どうしても時間がとれないので、公式にコンビニやファーストフード店を利用させてもらえるよう依頼しています。しかし、周りの目があるのであまり利用できていない状況。救急車を適正に利用していただき、緊急性がない方は、ご自身で通院して頂くだけで状況は変わってくるのかなと。

「1秒でも早く必要な人のところへ」富田さん

―活動時間短縮のための取り組みは?

富田さん:もし、ご家族が心停止、または心停止になりそうな時にどのような処置を希望されるか?事前にご家族か関係者で話し合っていただけていないと、どのような病院に連れて行ったらよいのかわからない。

猪俣さん:その中の取り組みとして、消防がアドバイザー役になって、練馬区地域医療課が制作した「119あんしんシート」があります。救急搬送時に、受け入れ先の病院が知りたい情報を事前に書いておきます。これがあることで活動時間を大幅に短縮できます。

練馬区内の消防がアドバイス「119あんしんシート」

猪俣さん:アドバンス・ケア・プランニング(ACP)といって、もしものときに、どんな医療や介護を受けたい・受けたくないと思っているのかをご自身で考えておくプランがあります。「“もしも…”を考えるきっかけシート」というのもチェックシートもあり、大切な人と共有するために書いておいてほしいと、日常から広く区民の方にご案内しています。

区役所や地域包括支援センター、薬局などで配布中「“もしも…”を考えるきっかけシート」

救急業務にさらなる理解を

冒頭に示した通り、練馬区の場合、人口が約74万人に対して、救急車は計12台。人口と救急車の配備台数は、消防法などによって決められていますが、私は率直に少ないと思いました。
皆さんはどのように感じたでしょうか?
都内、いずれの自治体においても救急車の数には限りがあるため、適時・適切でなければならないのは理解できるのではないでしょうか。

消防の方から、119にまつわる他の話もありました。

Live119」といって、119番通報後に消防庁が通報者のスマホ映像を確認しながら応急手当の方法をアドバイスしてくれる仕組みがあります。
あるとき、応急手当をしていた人が「Live119」を使って、倒れている人をスマホで撮影していたら、通りがかりの人に怒られてうまく使えなかった。という誤解があったそうです。
救急隊員、運転手などの休憩や食事についても、「サボっている!」と受け取られるような、誤解があるかもしれません。
この辺の誤解を理解に変えていかないといけません。

「迷ったから#7119」になってほしい

私たちJ:COMの制作スタッフは、消防署への取材機会がとても多いです。
練馬消防署では毎月救命講習を行っています。
一人でも多くの人が応急救護ができれば、救急車が到着するまでの間に命を救う確率が高くなるからです。

私は、これまでに何度も「病院?救急車?迷ったら #7119 」を呼び掛けてきました。
しかし、事態は深刻。「迷ったからこそ#7119」が浸透するまで、広くお伝えしていかないといけません。
緊急性のない救急出動は、命が助かる時間を削ってしまいます。
切迫感のフェーズが上がっている印象を受けました。

119番通報は緊急のダイヤル

取材協力:練馬消防署