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「命はめぐる」…自然豊かな街の「地域と企業」の結束

海と山 自然が豊かな南三陸町

J:COM安心安全チーム、宮城・仙台担当の野元です。

今回、ご紹介するのは、沿岸部にある南三陸町の復興にむけて取り組まれた地域と企業の関わりです。
 
海里山が一体となった豊かな自然を有する南三陸町。
宮城県の中心部、仙台市から約90キロの位置にある町です。
海と山そして川と自然が豊かな地域です。

東日本大震災では、世帯数の61.94パーセントにあたる3,321戸が全壊または半壊し、津波や避難後の影響で関連死を含む640人もの方が亡くなり、211人の方が13年近くの月日が経った今でもいまだ行方の分からないままです。
(参照:南三陸町HP)


賑わいの象徴「南三陸さんさん商店街」


海・里・山の自然があふれる町


日本とイースター島にのみある「目のあるモアイ像」
震災復興と友好のシンボルとしてチリから贈られたもの

自然環境を意識した復興計画 それを担うバイオガス施設

震災による甚大な被害を受けた南三陸町。
復興の過程で人と環境にやさしく震災に強いまちづくりを目指し「南三陸町バイオマス産業都市構想」を策定しました。

その構想の実現に向けて、森里海が一体となった循環型の地域づくりを担っているのが、バイオガス施設「南三陸BIO(ビオ)」。
生ごみや、し尿処理した後に出る汚泥等を、微生物の力で電気と液体肥料(液肥)に分解する施設です。

南三陸BIO(ビオ)生ごみを扱う施設とは思えないほど臭いがしません

「地域の生ごみ」から「電気と肥料」

町内の家庭や飲食店などから集められた生ごみや食べ物の残り物などを微生物(メタン菌)に分解させて、その時に発生するメタンガスで電気を発電。その量は最大600KWh/日。
一般的な4人家族の1日の電力消費量が約10kWh前後とすると、約60軒分に相当します。

町内すべての電力を賄おうとすると今よりもずっと大きな施設が必要になってしまうそうです。

そこで現在は、発生した電力は微生物が活動しやすくするための温度管理に使用されています。災害時にはその電力を住民に携帯合電話などの充電に提供することを視野に入れているということです。

施設の発電量を確認する現在の所長 岡田修寛さん

循環型社会の実現

ごみを処理する従来の焼却処理施設は、ごみを燃やすために化石燃料を使用し、大量の二酸化炭素が排出されるそうです。
一方で、南三陸BIOは、資源化工程において火や水を用いないため、二酸化炭素の排出が焼却炉に比べて少ないことや排水がないのが特徴となるそうです。

発酵処理の際に生成される「液肥」は全量地域資源として町内の農地や一般家庭で利用されています。

町内34カ所にある「液肥タンク」 いつでもだれでも利用が可能

誕生のきっかけは復興ボランティア

この施設が誕生したきっかけは、震災が起きた年の2011年9月までさかのぼります。
京都市に本社を置くアミタホールディングス社内で有志を募り、縁もゆかりもない南三陸町で復興ボランティアを行います。

「この町のために会社として何かできないだろうかという想いしかありませんでした。」そう話してくれたのは、当時、ボランティアに参加していた社員のひとり、櫛田さん。

復興が進められるうちに、ボランティア活動を通じて地域の方と交流する機会も増えてきたある日のこと、被災を逃れた方が話したことが印象深かったそうです。
「生かされた命を 未来のために この町のために どう使うか… 。」

「生かされた命」をどう使うか

大切な家族や仲間を震災と津波で亡くした方が話した「生き残った」ではなく「生かされた」という言葉。

「生かされた命」を「犠牲になった方の分まで より良い未来のためにどう行動するか」
 
深く心に刻まれる言葉です。

2012年から6年間 南三陸町に常駐し活動した アミタホールディングス 櫛田豊久さん

「持続可能な完全循環型社会の実現」という理想

「この町の未来に貢献したい そういう想いだけでした。それは、会社も同じでした。」
震災の翌年2012年にアミタホールディングスは、南三陸町内のアパートの
一室に事務所を構え、本格的に町の復興に向けて取り組みを始めました。
 
2014年に南三陸町がバイオマス産業都市構想を定め、国の認定を受けます。
アミタホールディングスは、地域の中で資源・エネルギー・人の想いが循環するバイオマス産業都市構想の構想原案づくりから関わったそうです。

同じ年にアミタホールディングスは、南三陸町と官民連携協定を締結し、その翌年、2015年に構想の中核施設となる南三陸BIOが開所となりました。

自然はめぐる 命もめぐる

南三陸BIOの運用にむけては、何度もの住民説明会を重ねたそうです。
櫛田さん曰く、事務所では社員同士の熱い討論が何度も繰り返されたそうです。
 
海と里と山がつながっている。人もつながっている。 

「自然を守ること」は「命を守ること」につながる。
それは、「命がめぐる」こと。
この想いは、行政と企業、そして住民も同じだったそうです。
 
その後、近隣市で焼却処理していた生ごみの資源化と液肥の町内循環を達成し、地域の環境教育の場としても活用され、復興とともに循環型社会の形成を目指しています。

作って終わりじゃない

運用が始まったわけですが、それで終わりではありませんでした。
南三陸BIOで働く人や副産物である液肥の運送と散布を担う運送会社など、町の雇用にもつながっています。
 
地元の高校生たちが生ごみの分別方法を紹介したチラシを作ってくれたりと、自然環境を意識した地域との取り組みが継続しているそうです。
 
現在、所長を務める岡田さんをはじめ、スタッフの皆さんにその想いは受け継がれています。
町内の保育園などで紙芝居をつかった環境への教育といった取り組みも行われ、南三陸町の循環型社会の形成につながっています。

地元の保育園児と (画像提供:アミタホールディングス)

地域の一員として

櫛田さんは、現在南三陸町だけでなく、自然と人間関係が豊かになる地域循環モデルを広げるため、本社がある京都へ戻り、全国を飛び回っているそうです。

南三陸町に来られるということで取材に向かったこの日、町の人から「こっちに来ているなら、ウチにも寄っていってよ」といくつもの連絡が入ってきていました。
 
「こうしたお付き合いができているからこそ、何かあった時に助け合えるんじゃないかと思うのです」
そう櫛田さんは話します。

さらに…「企業も地域の一員として助け合っていきたい。そういう関係を目指しています」
「地域に暮らす人々の関係性や、地域資源の循環という基盤をしっかり固める。そうしたお手伝いも企業の役目ではないかと思います」

アミタホールディングス 櫛田豊久さん(左) と 現在の所長 岡田修寛さん(右)

共助としての企業の取り組み

私が担当する仙台市をはじめとした宮城県はあの日から13年を迎えます。
アミタホールディングスのほか、様々な企業や人があの震災の教訓を胸に復興と防災・減災にむけて企業が持つノウハウを掛け合わせた取り組みを行っています。
 
「地域や社会の課題解決に企業がどのように貢献できるか」

その裏側にあるのは、今回ご紹介したアミタホールディングスの皆さんのように、これから災害が起きた時に地域とそこに住む人々の役に立ちたいという企業と働く人々の想い。
 
地域の共助に関わる一員として、いざという時、役に立ちたい。
こうした力も大切ではないかと思います。

そうした企業で防災に取り組む人々の想いを特別番組で放送します。
こちらもぜひご覧ください。

  【番組名】  地域発 未来へつむぐ安心安全
       「復興から防災へ テクノロジーでつなぐ」
【放送エリア】  J:COM 埼玉・仙台エリア
  【放送日】  3月1日~
    ※最新の放送日程については、電子番組表(EPG)でご確認ください

取材協力:アミタホールディングス株式会社


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