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安心安全で支え合いのできるまちづくり ボランティアグループが「防災」をテーマに挑戦

J:COM安心安全チーム 東京担当の櫻井です。
安心して暮らせるまちづくりの第一歩として住民同士が顔見知りになるための手段は、茶話会、レクリエーションなどいろいろな方法がありますが、、、「防災」をテーマにまちづくりに取り組む団体を取材しました。
こちらの情報は安心安全サポーターの大村さんからお寄せいただきました。


「一歩一歩、地道にやっていこう」の想いを込めて

「防災」でまちづくりに取り組んでいるのは、東京都東大和市のボランティアグループ「N・S・Cぽつぽつ隊」(以下「ぽつぽつ隊」)。グループ名の由来は、活動の対象エリアとなる地区名、南街(なんがい)・桜が丘・中央の頭文字と、地道にやっていこうという想いが込められています。自治会以上・市区町村未満、小学校区・中学校区程度のエリアを「地域」ととらえ、そこに住む様々な事情を抱えた方が、互いに地域の問題を話し合い支いあえる関係性づくりを目指して活動しています。

2024年度は「防災」をテーマにまちづくり

「ぽつぽつ隊」は、地域(南街・桜が丘・中央)の特徴として、住民が自治会会員、自治会はあるけど入らない人、自治会が無い地域の人にわかれ、それぞれ取得する情報に大きな格差があることに着目しました。 情報が入らないことが防災に対する意識と行動のバラツキを生み出し、多様な住民が「共助」という組織行動をすることを望めないと考えました。

そこで、誰もが実行でき、かつ実行すべき最小限の「自助」の強化のため、2024年度は「防災:最小限の『自助』活動」をテーマに、毎月1回防災知識を学ぶ会「地域交流の場 ぽつぽつ」を喫茶店で開いています。

各回のテーマは、家具の転倒防止、トイレの備え、生き延びるための健康維持のヒント、避難生活で自分を癒すアロマの活用方法など多岐にわたります。

1月は「お薬のこと」

以前、参加者にアンケートを取ったところ関心が高かったテーマが「災害時を見据えたお薬の備え」でした。そこで1月はリクエストにこたえる形でテーマが設定され、ぽつぽつ隊のメンバーの一人で、近隣の薬局に勤める薬剤師の浅田さんが、講師を務めました。

講師 「ぽつぽつ隊」メンバーの薬剤師 浅田美子さん

浅田さんが特に勧めたのは、おくすり手帳を作ること。どんな薬をどのくらいの量や期間服薬している、あるいは、していたのか。このような情報をまとめておくのがとても大切。備蓄する際に、薬だけだと実は不十分で、「情報」も欠かせないのです。

熱心にメモを取る参加者

スマホで使える電子版おくすり手帳もありますが、バッテリーがなくなれば起動できません。現時点では紙のおくすり手帳も持っていることがお守りになると話していました。

また、おくすり手帳を作るときの注意点は、1冊にまとめること。病院ごと、薬局ごとに作ってしまうとその人がどんな薬を服薬しているのか、過去に副作用はなかったか、薬の飲み合わせを医師・薬剤師が判断できなくなってしまいます。

会の終わりはティータイムでおしゃべり

約1時間の講話のあとは、質問や雑談など自由に過ごすティータイム。この時間が住民同士の交流を深める大切なひととき。この日は季節柄、おしるこが用意され、部屋にさわやかな甘い香りとにぎやかなおしゃべりが広がりました。

この日のおやつ おしるこ

習ったことを振り返ってほしい

勉強会では毎回資料が配布されます。これをまとめると1冊の本になります。1度聞いただけでは忘れてしまう防災の知恵・知識を、読み返してほしいという願いが込められています。また、すべての資料はWEBでも公開していて、だれでも閲覧することができます。

※はじめて受講する人にはインデックス付の紙ファイルも渡されます。当日の資料を所定のインデックスのところにファイルします。全て受講すると1冊の本になるしかけ。 希望者には、受講していない回の資料も配布している。

「ぽつぽつ」の過去配布資料 (東大和どっとネットより)

口コミで広がる「ぽつぽつ隊」の輪

公式のウェブサイトなどを持たない「ぽつぽつ隊」の集客方法は、口コミ。参加した方が友達に呼びかけ、2024年度は、1月まで9回開催(8月休講)の集計で延べ約100人が参加しています。喫茶店のオーナーに誘われて2回目の参加という方は「こうした知識はなかなか自分では調べない。会に足を運ぶから得られる知識。顔見知りもできるしね」と話します。

地域住民が地域の課題を出し合い、解決策を考える

「ぽつぽつ隊」は、厚生労働省の「生活支援整備事業」(地域ならではの支え合いの仕組みを、そこに住む人たちが実現していく事業)の推進組織として、現在東大和市内で7つある「第2層協議体」の1つです。

地域交流にプラスαの「お役立ち情報」を

2023年度以前より「ぽつぽつ隊」の活動テーマの一つとして「防災」を掲げていましたが、2024年度は改めて「防災:最小限の『自助』活動」を主テーマにしました。これは、南街・桜が丘・中央地区には「栄養・運動・社会参加」に関するサロンは既にたくさんありましたが、「防災」はなかったから。一方で、「防災」に関する情報は世の中に溢れるほどあり、逆にどこまでやればいいか分からない、との悩みの声もありました。そこで、単に交流だけではなく、「自助って最小限ここまでやればいいんだ」「知ってよかった」と、いつか命を守るかもしれない防災知識も持ち帰って欲しいという狙いがあります。

「ぽつぽつ隊」メンバー大村さん(安心安全サポーター)

「ぽつぽつ隊」の願い

活動を通じて、高齢者だけでなく、障がい者、子育て世代、引きこもりがちの方など様々な事情を抱えるどんな人も安心して暮らせる居場所づくり、まちづくり、の一助になればと思っているそうです。

まとめ―「地域交流の場 ぽつぽつ」を取材して

一言でいうと「アットホーム」。講師の浅田さんと参加者が顔なじみということもあり、質問や困りごとをつぶやきやすく、黙ってなくていいんです。だから、ふとしたつぶやきが共感を生んで話が深まっていきますし、たまには脱線したり、ちょっとした茶々が入ったり・・・でも、防災に必要な情報はしっかりと盛り込まれています。

実は「ぽつぽつ隊」の企画は防災にする必要はなく、地域の課題を解決するためならどんな企画でも良いのです。しかし、地域の問題点を分析して、あえて「防災」で誰もが安心して暮らせるまちづくりを進めてみよう、という挑戦は、新しいまちづくりのスタイルを見せていただいたような気がします。

取材協力:N・S・Cぽつぽつ隊