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震災で見えた課題を「館内一斉放送」で解決‼

今回は、千葉県我孫子市で、過去の震災経験をもとにマンションの「在宅避難課題」に向き合った自治会・管理組合の取り組みをご紹介します。

耐震性の高いマンションでの「在宅避難」と対策

取材にご協力いただいたのは、千葉県我孫子市にある citia(シティア)。
851世帯・約2,000人が居住する大規模分譲マンションです。

耐震性の高いcitiaは、倒壊の可能性が低いこともあり「在宅避難」を前提に防災計画を立てています。
このため、住民の皆さんには日ごろから在宅避難を想定した「備え」を呼びかけ、管理組合・自治会の皆さんはマンション内で実施できる「共助」を検討し、課題解決を進めています。

共助の対策の中でも、東日本大震災で経験した停電対策に関しては意識も高く、これまでに導入・設置された主な対策としては…

・LPガス発電機(停電時の電力確保)
・LEDライト(夜間・停電時の災害対策本部運営等での照明確保)
・トランシーバー(災害対策本部報告および役員情報共有)
・要救護者搬送用品器具(外階段で使用)
・手動給水ポンプ(上層階への水の運搬)

…など様々なものがあります。
ただ、citiaの皆さんは「これが全てではない」と定期訓練を実施しながら課題の洗い出しや対策の見直しを進めています。

citiaが感じた「在宅避難」の最大の課題 

停電時の対策だけでも、十分に検討されていると思いましたが、citiaで「すごい!」と感じたのは、東日本大震災の翌年に「館内一斉放送」を導入したことでした。

宅内のスピーカー インターホンの上部に設置

citiaでは全住居を対象に、室内に「個別スピーカー」を設置しました。
緊急一斉ボタンで放送が行われると、同じ音量で同じ内容の放送が全戸に響き渡ります。

館内一斉放送の放送卓

このように書くと「少しうるさいかも」と感じるかもしれませんが、ドアや窓を閉め切った状態にすると外の音が聞こえず、避難行動が遅れる…と考えれば、防災・減災の観点から非常に有効な設備だと思います。

加えてこの設備は、バッテリーと外部電力(発電機など)でも放送できるため、停電時でも使用することができます。
また室内スピーカーは、各戸で「消音・音量調節」が可能です。citiaの皆さんは、予算との折り合いや試行錯誤を繰り返して、竣工後に後付けで導入に至りました。

各戸で調整できる館内一斉放送の音量調節機

便利な設備、どう活かす?

citiaの館内一斉放送は、さらに優れているところがもうひとつ。
それは「館内一斉」と名前がついているのに、放送する場所を選べること。citiaには、居住棟が8棟。エレベーターが12機。加えて、カフェやコミュニティ施設が5つあり、用途に合わせて施設を選んで放送することができます。

例えば、どこかの棟でエレベーターが故障した場合は、その付近の居住者のみに放送する。日用品などを販売する施設では、新鮮な食材が入った際に放送するなど、用途や目的を選んで、きめ細かな放送も可能です。

昨年citiaでは、設備のメンテナンスも兼ねて秋まつりの告知に放送を使ったとのこと。平時の放送は設備のメンテナンスにもつながります。

ただあまり放送を使いすぎると、緊急のための放送としての認識が薄れる。任意で消音・音量調節ができるといっても、静かな住環境でなくなる。など、取材に伺った日に行われていた防災訓練の反省会でも、活用法については、様々な意見交換が行われていました。

取材を終えて

最近、取材で大規模マンションの状況などを伺いますが、後付けでこうした設備を導入されたところは稀な事例でした。
予算や総会決議などは「震災直後とあってスムーズに進んだ」とのことですが、当時は計画停電などもあり、数時間とは言え情報から隔絶された状態を耐え忍んでいた事を思い出すと、いざと言う時に「安心感」を感じられる設備は「心強いな」と感じました。

取材協力:citia