子どもから見た「あの日」を漫画で伝える
J:COM安心安全チーム、宮城担当の野元です。
今回は石巻市にやって来ました。仮面ライダーやサイボーグ009で知られる漫画家 石ノ森章太郎さんゆかりの地です。
今回、私が紹介したいのが…
「あの時、子どもだった私たちから伝えたいこと」という3冊の漫画です。
子どもの視点から見た「震災」
東日本大震災当時、小学生や高校生だった6人の方の被災体験と当時の想いのエピソードがまとめられています。
仙台市の漫画家 井上きみどりさんが6人それぞれに取材を重ね、親しみやすいタッチのイラストで描き上げた作品です。
子どもから見た震災の現実。身に詰まる内容でした。
大切な家族、友人を震災で亡くした経験。
無事に避難したけれどそこから生まれた後悔など…
あの時、言葉にできなかった思いと語られなかった物語。
漫画に込められた子どもたちの当時の思いと経験…
自分自身、とても考えさせられたのが…
当時高校生だった阿部 任さんという方が、倒壊した自宅から無事に救出され、それを伝えるマスコミについて描かれたエピソード。
取材を受ける方の気持ちについてもとても考えさせられる内容でした。
ほかにも、災害が起きた場合、避難する避難所との向き合い方についても描かれています。
「その指定避難所、本当に安全ですか?」という東松島市野蒜地区の指定避難所で起きたエピソード。
私も震災の翌年、現地を復興ボランティアで訪れたことがあるのですが、
地元の方から聞いた時、なんとも言い難い感情になりました。
主人公と出会う
漫画の内容は震災伝承交流施設「MEET門脇」で、ナレーションつきの動画で上映されています。
「MEET門脇」は、その当時の教訓を後世に伝えていくことを目的に、子どもたちが自主的に学ぶ場となっています。
伺った時に、施設を運営する「3.11メモリアルネットワーク」中川さんに
この本について取材していたところ…
「エピソードの主人公のひとり阿部さんに会いますか?」と。
漫画の主人公に会えるって、なんか不思議…
阿部さんは、大学卒業後「MEET門脇」や全国各地の様々な地域で語り部としての活動をはじめ、石巻の復興や震災の記憶を残すためのお仕事をされているそうです。
じつは、漫画のマスコミ取材についてのエピソードは、阿部さんの体験談。
作者の井上きみどり先生は、当時の様子を事細かに気持ちに寄り添いながら取材されていたそうです。
阿部さんからも「忌憚なく、あの時思ったことを話しました」と笑顔で話してくれました。
2023年3月の発売以来、学校の図書館へ寄贈したい、町内会で配布したいなど、全国から購入や問い合わせがきていて、年末には第3版が増販されたそうです。
「MEET門脇」のすぐそばにある「震災遺構門脇小学校」
「MEET門脇」のすぐそばにある石巻市震災遺構門脇小学校。
東日本大震災で1階は津波。2階と3階は津波で起きた火災の被害を受けました。当時の校舎をほぼ残したままにして保存されています。
当時の被害や状況を知ることができ、
想定を超えた災害における避難の在り方など考えさせられます。
石巻市では、あの震災で3,553人の方が亡くなっていて、417人の方の行方がいまだ分かっていません。※2023年9月末 時点 参照:石巻市HP
あの日の震災と津波でかつてこの一帯にあった町と、人々の暮らしを一変させて、この景色へと変えたと思うと、災害の脅威をいまだに感じます。
その脅威となった海は、この日も穏やか。
海の幸。山の幸と自然の恵みが楽しめる宮城県。
もし、訪れる機会があったときは、少しだけ足を延ばして
あの震災からの教訓を直接、見て、聞いて、防災のきっかけにしていただけたらと思います…。
取材協力:公益社団法人「3.11メモリアルネットワーク」
MEET門脇
https://311support.com/learn311/meetkadonowaki
「あの時、子どもだった私たちから伝えたいこと」1~3巻
amazonで購入が可能です(3冊セット 1,500円)https://www.amazon.co.jp/dp/499130203X