春日部市で初!妊産婦福祉避難所の開設訓練
J:COM安心安全チーム、埼玉担当の和田です!
今回は、我々の活動をフォローして下さっているサポーターのナオナさん(埼玉県春日部市)から記事をいただきましたのでご紹介いたします。
今回で4回目の登場になります。
こんにちは、ナオナです。「防災士1年目」という肩書きがそろそろ取れる時期になりました。
「防災、やったほうがいいけど手をつけていない」状態から一念発起で防災士の資格を取得。社会の防災意識も高まる中、イベントや訓練などで様々な学びを得て来た1年目の締めくくりは「妊産婦福祉避難所 開設訓練」のレポートです。
「福祉避難所」とは…
「福祉避難所」とは、障がい者や高齢者などの特別な配慮を必要とする方を受け入れるための設備や人材を備えた避難所です。
現在春日部市では、市と協定を締結している民間の障がい者施設と高齢者施設などを合わせて43施設を福祉避難所として位置付けています。
つまり、「福祉避難所」は必要に応じて災害時に開設される二次避難所であり、発災直後にすぐ行く避難所ではないんですね。
助産院が妊産婦福祉避難所になるための第一歩
今回私が取材に訪れた、訓練の舞台は助産院。
そう…妊産婦さんと乳幼児の避難者を想定しているのです。現時点では春日部市に妊産婦さんのための避難所は無く、これが初の試みです。
これから春日部市で初となる妊産婦福祉避難所として協定を結ぶにあたり、避難者の受け入れ方や必要物資などを検証するために行われるとのこと。
訓練は、2024年10月31日に助産院「母魂」(ぼこん)の助産師 天満屋敷千幸(てんまんやしきちさち)さんをはじめ、春日部地区助産師会から5人、春日部市役所からは危機管理防災課、こども相談課、健康課が参加して開催されました。
助産院「母魂」は、宮代町・杉戸町・さいたま市・春日部市から事業委託されている産後ケア施設です。春日部市では唯一自然分娩ができ、親子で宿泊もできる助産院です。
行政側と会議を重ね、いよいよ踏み出す第一歩。
訓練は、春日部市で最大の被害が発生するとされている茨城県南部地震を想定して行われました。
訓練実録・発災直後
◆震度6強を観測した春日部市。
◆災害対策本部が設置され、市内ですべての避難所が開設されます。
◆市役所から助産院に開設準備の要請が入ります。
◆「母魂」の助産師、天満屋敷さんは春日部地区助産師会のメンバーへ集合をかけます。
◆市内に住む妊産婦(避難者)が小学校などの避難場所に到着します。
訓練実録・妊産婦福祉避難所の開設
◆妊産婦福祉避難所開設が行政から要請されます。
◆ここで、ミルクやおむつなどの必要物資が行政に要請されます。
この訓練では避難者の設定が細かく決められ、市役所職員が役を演じます。
① 20代妊婦(初産)妊娠週数12週 ※夫と同行
② 30代妊婦(初産)妊娠週数38週 ※時折、微弱陣痛あり 同行なし
③ 20代産婦(経産)生後5ヶ月・2歳児女児(姉)と同行
④ 40代妊婦(初産)妊娠週数28週 本人:精神疾患 ※同行なし
⑤ 30代産婦(初産)生後10日の新生児・夫と同行
⑥ 30代産婦(経産)生後10ヶ月・5歳児男児(兄)と同行
誰ひとりとして同じ状況の人がいないため、細やかなケアが必要なのです。
訓練実録・妊産婦(避難者)の受け入れ
◆「母魂」が妊産婦福祉避難所として開設され、約30分で妊産婦(避難者)が到着。入口で妊娠週数や体調などを確認し、それぞれ別の部屋へ誘導します。
◆1階には、出産日が近い妊婦や、観察が必要なリスクが高い状態の妊婦が滞在します。布団を敷いて、恐怖や不安を和らげるように、助産師が話をしながら、状況を確認します。
◆2階でも同様に、助産師が寄り添いながら、必要なものや家族との連絡手段などを確認。「お昼は食べたの?」「かかりつけの病院はどこ?」「旦那さんと連絡はつくの?」などと声をかけます。
この訓練では、おむつが必要な子どもを連れているケースや、動き回る年齢の子どもを連れているケースも想定。途中、破水し、救急車の要請をする場面もありました。妊産婦役も、助産師も真剣に取り組みます。
訓練実録・物資の到着
そうこうしているうちに、市役所職員が物資を携えて到着。
―「おむつのサイズは?」「お母さん用に水も必要だ」…要請時に必要性がわからなかった物資が明らかになってゆきます。
様々なトラブルに対応しているうちに、あっという間に時が過ぎ、約1時間半の訓練が終了。訓練によって浮き彫りになった課題がたくさんありました。「ミルクはあるけど、それを入れるものが必要」「おしりふきも必要」「ご家族も一緒にいる場合も考え、授乳の配慮も必要」「受付での振り分けが大変」「アレルギーや離乳食の対応が難しいのではないか」などです。
訓練を実施してみて、どうでしたか?
取材者として観察した私としては助産師の方々が皆さん真剣に母子を心配し、考えて行動をしていたことが強く印象に残り、また担当者それぞれが自分の勤めにかかりきりになる状況も見て取れ、全体に情報を共有する役割の人も必要なんだな、ということも感じました。
いつ起こるかわからない災害に向けて、行政と助産師会が一丸となって取り組む現場に立ち会えたことで、災害に対してやみくもに不安になるのではなく、私たちも妊産婦の皆さんも、日ごろから自分達の状況にあわせた備えをしていくことが大事なのだなあと感じました。
今回は取材をさせていただき、本当にありがとうございました!
ナオナさん(写真左) プロフィール
埼玉県 春日部市在住。
イベントプロデューサー、地域コーディネーター、春日部市総合振興計画審議会委員、かすかべSDGsパートナー、J:COM安心安全サポーターなどをつとめ、地域活動を精力的に実践する整体師。ピカピカの防災士1年生!
取材協力:助産院 母魂
春日部市危機管理防災課