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外国人住民も『はなれてくださ~い』

J:COM安心安全チーム 東京担当、防災士の市川です。

「日本赤十字社 東京都支部(新宿区大久保1丁目)」救急法講習からの取材ノートです。~Japanese Red Cross Society First Aid CPR/AED~

突然ですが、『あなたは119番お願いします。あなたはAEDを持ってきてください!』、見知らぬ人に助けをお願いするこのセリフ…言ったことはありますか!?

人を「助ける側」にまわる瞬間

このセリフをご存知の方は、AED(自動体外式除細動器)を触ったことがある方なのではないでしょうか?
これは、AEDを扱う訓練では必ず習うセリフとアクションなんです。
取材時、私に届いた声は、たどたどしくも、一生懸命さを感じる響きでした…。

2011年3月の東日本大震災について学ぶ参加者
世界中の赤十字が共有する7つの基本原則の1つ、公平
「いかなる差別もせず、最も助けが必要な人を優先します」

「日本赤十字社 東京都支部」では、救急法や水上安全法など、様々な講習を行っています。
令和5年度は、計430回(受講者数19,826人)実施しました。
その中には日本語を母国語としない人を対象にした、心肺蘇生とAEDの講習があるんです。
目的は「多文化共生」と「減災」の輪を多くの人に広げていくこと。
背景には、東京都にいる約64万人の在留外国人(※1)の存在があります。


助けられるか見極める?

いざという時、「周りの人」が迅速に手当てできれば、多くの人の命が救われる…。「周りの人」というのは、「身近に暮らす外国人」なのかもしれません。

胸骨圧迫 Kyo-Ko-Tsu Appa-Ku(chest compressions)

では、日本赤十字社の講習に参加していた人は?というと、東京に20年以上住んでいるタレントさんや、1か月前にモデルとしてやってきた人も…。
国籍も14の国と様々でした。

メモをとっているノートを見せてもらうと、英語、ポルトガル語…、ヘタなので見せたくないという日本語もチラホラ。

茣蓙(ござ)の上に置いてある、いのちを救うポルトガル語のメモ

防災の現場で登場する「やさしい日本語」

この講習の特徴は「やさしい日本語」とボランティアによる英語通訳でわかりやすく教えてくれること。

私が思う「やさしい日本語」とは…

  • 日本語を母国語としない外国人でも理解できる カンタンな言葉

  • 日本語学習の初歩に登場する語彙の範囲

  • 区切りがわかる(表記はスペースを入れて、文節がわかりやすい)

  • お役所言葉のように硬くならない

例)「地震です。高台に避難してください」
やさしい日本語の言い換え⇒「地震です。高いところに逃げてください」

https://tabunka.tokyo-tsunagari.or.jp/yasanichi/about.html

「やさしい日本語」は、1995年の阪神・淡路大震災の際に、多くの外国人に対して避難所の場所などの情報が伝わらなかったことがきっかけになって考案されました。
“易しい”フレーズを選べる人は、相手のバックグラウンド(漢字を勉強している人なのか?聞き取りが得意な人なのか?相手の言語の文法順にしたほうがいいのか?など)を把握してしゃべるので、“優しい”し、賢い人だと思います。

国・地域に関わらず、大地震のときはコミュニケーションが大切

たすけるときの にほんご
「よし」、「だいじょうぶ?」、「だれか きてください!」

ホワイトボードには、次々とシーンに合わせた「やさしい日本語」が書かれ、インストラクターが胸骨圧迫 Kyo-Ko-Tsu Appa-ku (chest compressions)、気道確保 Ki-Dou Ka-Ku-Ho (securing the airway)、人工呼吸 Jin-Kou Ko-Kyu (artifical respiration)、心肺蘇生 Sin-Pai So-Sei (cardiopulmonart resuscitation)を教えていきます。

口がパクパクして、呼吸がなかったら、胸骨圧迫!
「強く strongly、速く rapidly、絶え間なく continuously」

講習で生まれる自信

講習に参加した全員が心肺蘇生法とAEDの取り扱いを習得できたと思います。
参加者からは「今回学んだことを必ず生かせる」、「外国からの旅行者も多いので勇気をもって助けたい」といった声がありました。
緊急時の意識が本格的に「助ける側」にシフトするのは、「実体験に基づく自信」からなのではないでしょうか。

もしAEDを使ったことがないという方でも、AED機器の日本語ガイダンスに従えば対処できます。詳細は最寄りの消防署へ。

一刻を争いますので 周辺にいる人と協力してください
電気ショック前の「離れてください!」Hanarete-Kudasai (please stay away) 

※1 東京都総務局統計部
取材協力:日本赤十字社 東京都支部