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マンション防災セミナーを聴講してきました

 J:COM安⼼安全チーム、千葉・茨城担当の塩見です。

今回は、NPO法人住管センター主催で開催されたセミナー「マンション防災の基本~大地震発生!マンションで生き延びる~」の聴講レポートです。



NPO法人 住管センターと今回のセミナー

記事タイトルの通り「マンション」について話題なので、主催者の「NPO法人 住管センター」の名称で、"住宅の管理に携わる団体"、と想像されると思います。
団体の正式名称は「特定非営利活動法人 集合住宅等管理支援センター」。
名称を略しすぎでは? と思いましたが、こちらは、マンションに限らず、“集合住宅の管理を「支援」する非営利団体”とのことです。

平成15年(2003年)に、集合住宅の管理組合に対して、組合運営や建物に関する技術面など、様々な課題の解決をバックアップしようと設立されました。 (※1)

今回のセミナーは、住管センターの活動の主軸になっている教育普及活動の一環として開催されました。
しかも「マンション防災」に特化した講義内容は、初めてとのこと。
設計、施工、修繕、管理組合運営など、住宅のプロが集まる住管センターの中でも、マンション管理士で防災士の資格を持つ、栗原典子さんが講師となってセミナーは開催されました。
 

(※1)<団体概要>
特定非営利活動法人 集合住宅等管理支援センター
(略称 NPO法人 住管センター)
■設立:平成15年8月
■目的:集合住宅等建物を健全な状態で維持・保全していくため、幅広い分野での調査研究及び教育普及活動を行い、居住者及び専門家の情報交換を促進しながら、安全で快適な住まい作り、街づくりの形成・推進をもって公益に寄与する。 
■活動:管理組合顧問業務、ライトアドバイザリー(LA)業務、管理規約・細則見直し支援業務、管理会社見直し支援業務、管理費滞納問題支援業務、マンション(団地)再生コーディネーター、マンション防災対策サポート
ホームページ http://www.jyuukan-center.com/
 

セミナーの様子 場所:船橋市勤労市民センター
挨拶する NPO法人 住管センター 外池 謙二郎 理事長
講師:栗原 典子 さん

<講師紹介>
栗原 典子(くりはら のりこ)マンション管理士
マンション管理に携わる21年の経験により組合運営、修繕、自治会、防災等幅の広い管理組合業務に関するサポートを担う。
資格:マンション管理士・行政書士・一級建築施工管理技士補、宅地建物取引士・防災士・マンション維持修繕技術者

マンション防災の基本~大地震発生!マンションで生き延びる~

今回のセミナーですが、「マンション防災の基本」と題して、講師が作成した資料をもとに、約2時間の講義が行われました。

まずは、資料に沿って、テーマと内容を抜粋します。
 
令和6年9月1日開催 セミナーの内容
「マンション防災の基本~大地震発生!マンションで生き延びる~」
■日本の地震発生の現状
■千葉県北西部直下地震の被害想定
■熊本地震時のマンション被害
■大規模地震のマンションの被害想定
■マンションの地震保険のこと
■防災の基本的な考え方 マンションでは『在宅避難』が推奨されています
■マンションの防災対策は誰が行う?
■マンションの防災対策の進め方 
■安否確認が防災の基本 それには名簿の整備が大切
■検討事項を纏めて、災害時対応マニュアルを作ろう
■平常時のマンションの活動
■『在宅避難生活』のために自分でできること
■我が家の防災力!これがあると安心(防災備品)
■『在宅避難生活』の食糧備蓄はローリングストックが基本
■マンションの防災対策 事例1、事例2
■まとめ:マンションでの避難の原則は『在宅避難』
 

当日配布された資料

資料は16項目、全24ページ。
講義の補足として資料配布されましたが、これを読み込むだけでも、充分な知識が得られるものとなっていました。
 マンションと一言でいっても、戸数や建設された年代などによって、様々な形態のがあります。
このため、マンションの防災対策に「これです!」といった、総括的な事案を提示することは難しいのですが、マンション住まいのひとりとして、個人的に「なるほど!」と再認識した事や深く共感したことを、いくつか挙げたいと思います。  

■マンションは住民の合意形成が取れていれば、この上なく住みやすい環境である

これはセミナーの冒頭で出てきた一言です。
管理組合の役員を経験した私としては、かなりパンチの効いた言葉でした。
入居を決めた時は、居住空間の独立性や、あまり人と関わらなくてもよい、管理費を払うから賃貸のようにメンテナンスにも携わらなくてもよい…etc。

購入を決めたころの若かりし私が、如何に常識がなく、都合の良い面しか見ていなかったんだ、と反省させられました。
ひとつの建物を多数の権利者で共有する難しさ、ここがきちんとしていれば「マンション」は快適な住まいなんですよね。

 ■基本的な考え方:マンションでは『在宅避難』が推奨されています

1981年に改正された建築基準法の「新耐震基準」を満たしている建築物は、阪神淡路大震災の時も、大規模な倒壊や破損を免れたものが多かったそうです。
また、改正前に建設されていても、地震を見据え堅牢に建てられたものは、現行の耐震基準を上回る丈夫な建物もあるそうです。
このため多くのマンションで地震対策として、室内で安全を確保できるのであれば、自室に留まる「在宅避難」を選択しているところが多いのではないでしょうか。
 ただ、ここで見落としてはいけないポイントは、地震の影響で共用部分が壊れたり、インフラに関わる部分が破損して「継続して生活することが困難」になれば、避難の時期が終わったら退去しなくてはならない状況に陥ることがある事。
資料に掲載されていた熊本地震の写真には、棟と棟をつなぐ、連携部分が倒壊して、継続居住が困難になったマンションなどが事例として掲載されていて「在宅避難」という言葉の意味を、改めて考えさせられました。

資料抜粋 熊本地震で被害を受けたマンションの写真(撮影:栗原講師)

■マンション館内の見えない設備の破損

災害の備えのひとつに水の備蓄があり、実践されている方も多いと思います。
もちろん、飲料水や生活用水を備蓄するのは事は大切なことです。
しかし見落としていたのは、地震発生後、配管の安全が確認される前に上下水道を使用すると、破損した配管から水が漏れる、排水機能が低下していて水が流れないといった状況に陥ることがあります。
これも集合住宅ならではの課題。
自宅は問題なくても、周囲や階下に影響を与えてしまうので、この点も十分な注意が必要です。
 

■マンションの防災対策は誰が行う?

大規模マンションでは管理組合や自治会の中に、防災部や防災担当者などが配置されていて、避難計画や訓練、備蓄などに当たっていますが、中規模・小規模マンションでは、予算や人員の制限もあり、そもそも対策自体に取り組めていないことがあります。
管理会社は、あくまで施設管理が仕事なので、災害対策は業務には入っていません。かといって、管理組合に担当がいなければ、誰が備えや対策を行ってくれるのでしょうか?
 
昨年、実施されたアンケートでは、マンションの管理組合で「防災に関する啓発や対策をこなっている」、「備蓄を始めた」など、防災対策に取り組んでいる組合は増加する傾向にありますが、住管センターに寄せられる問い合わせや相談は「防災に関して、何から手を付けてよいのか分からない」というものが、一番多いとのことでした。
 

■「在宅避難」をしている事を、誰か知っている?

「在宅避難」は「プライバシーが守られる」、「生活環境・衛生環境がよい」、「ストレスが少ない」などのメリットがあります。
その反面「在宅」=「室内」にいるので、室内に避難していることを知らせないと、誰も助けにはきてはくれません。

 これを防ぐため、在宅避難をしている状況を知らせる目印や安否確認の仕組み作りに取り組んでいるところもありますが、そうしたルールがないマンションでは、共助・公助が機能するまでの間は、まず自分の力で生き延びる手段や備えをしなくてはなりません。
 
近年、食料や水のローリングストック、防災備品も広く紹介されていますが、避難が長期化したら、個人の備えだけでは耐えきれないことが想像できます。
このためセミナーでは、家庭の備えはもちろんですが、平時からのマンションでの防災対策や訓練、お祭りなどのコミュニティ活動を通して、住民同士の繋がりを作っておくことが、防災につながると言及していました。

■まとめ

新しくマンションに入居する方は、仕事や子育てなど、ライフイベントで多忙な家族が多く「防災」以外にも、やらなければならない事が盛りだくさんだと思います。
また、防災に対する考え方や不安に対する「気持ちの尺度」も、住民それぞれに異なります。
セミナーの終わりに差し掛かったころ、冒頭で「マンションは住民の合意形成が取れていれば、この上なく住みやすい環境である」と言われていた講師の一言が、再び、思い返されました。
 
マンションには、平素の管理運営や予算、修繕など課題が多く、管理組合の役員の方は、皆さん頭を悩ませていると思います。
また、そのひとつひとつが、尺度の異なる住民の合意形成を取らなくてはならないものですから、防災以外にも、様々な専門家が粘り強くアドバイスする体制をもっている「住管センター」の存在は、心強いなと思いました。
 
さて、今回は、防災セミナーに関して、私の気づきを記載させていただきましたが、住管センターではセミナーだけでなく相談会なども定期的に開催しています。
ホームページなどでも紹介されておりますが、直接話がしてみたいという方は、連絡先を記載しておきますので、お問合せしてみてください。

 
特定非営利活動法人 集合住宅等管理支援センター
(略称 NPO法人 住管センター)
千葉県船橋市印内町603-1 田中ビル621
TEL 047-420-3307
FAX 047-420-3308
mail   info@jyuukan-center.com
HP   http://www.jyuukan-center.com/
 
 
取材協⼒︓NPO法人 住管センター