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『はじめの一歩』避難所開設の体験記

J:COM安心安全チーム、埼玉担当の和田です!
今回は、我々の活動をフォローして下さっているサポーターのナオナさん(埼玉県春日部市)から記事をいただきましたのでご紹介いたします。
今回で3回目の登場になります。


こんにちは。防災士1年目のナオナです。
防災士の資格取得時には事例の勉強が主なもので、実践を学ぶ機会はほとんどありません。
あとは、こうなったらどうする。こんな時何があったらいいかな…ととにかくイメージを膨らますしかなく、そのためにも過去の事例、他市の動きから学んでいくしかないのが現状です。

初の実践に、ちょっと緊張

防災士になってもうすぐ1年が経とうとしている中、とうとう実践練習の機会が来ました。
自治会の「避難所開設訓練」です。私が所属している自治会には189世帯が加入しているとのことですが、ほとんどの人の顔も年齢もわかりません。
何とか顔が分かるのは、たまたま班長が同じ時期になった方、運動会やバーベキュー大会などの活動に積極的に参加している方、十数名くらいでしょうか。
働いている世代だと、何軒か先のお家でさえ顔がわからないことも少なくありません。

初めての実践!

私が住む地域での避難所開設訓練は初の開催。
今日学ぶ内容は、教えに来てくれた春日部市役所の職員さん曰く「キホンのキ」…ファーストステップだそうですが、私たちは知らないことばかり。
その「キホンのキ」を今回ここに記させてもらおうと思います。

まずは知る事。それがはじめの一歩です。

避難所はいつ開く?

まずはレクチャーで覚えた基礎知識から。
春日部市の避難所開設の基準は、震度5強(以上)を観測した場合。
被害状況によって開設するそうです。
春日部市における地震の想定最大震度は、茨城県南部地震の場合に震度6強。全壊1000棟、半壊5000棟の予想。
東京湾北部地震で震度6弱。全壊100棟、半壊900棟の予想です。

今後30年以内に70%の確率で発生すると言われています。

水害の場合は、河川の水位が避難判断水位に到達し、引き続き上昇する可能性がある場合、浸水の状況を勘案しつつ、避難所の開設を決定します。
避難判断水位は、利根川で6.90m、江戸川で7.90m、荒川で5.00mです。
避難のタイミングや場所は、それぞれの家の状況や身体の状態により変わる、とのこと。

水害といえば、令和元年10月12日の深夜、台風19号の影響で利根川が決壊しそうだということで、春日部市にも避難警報が出たことがありましたね。
その時に避難所が開設されました。
翌朝5時、空は晴れていても川の水位は高いままで、いつ決壊するかわからなかったため、警戒は解けなかったそうです。

台風19号が去った翌朝の利根川(画像:春日部市危機管理防災課)

避難所を開設したら、市役所職員は2名ほど来る予定です。
あくまで予定です。なので、地域の人たちが力を合わせてその場を乗り切らなくてはなりません。

運営のかなめは、各自治会の自主防災組織です。


設営はどうする?

今回の避難所開設訓練では、実際に、体育館で紙管間仕切りと段ボールベッドを作りました。

みんなで組み立てる体験が災害時に役立つ
端は5センチほど突き出す

柱となる棒を立て、そこに四角になるように紙パイプを差し込むと2m四方の囲いになります。

そこに、カーテンとなる布を8枚。
一面に2枚使い外から中へ引っ掛けます。
下がスレスレになるくらいの長さに垂らすのがポイント。

床スレスレの高さに布の下端を調節

上辺3ヶ所ずつ、そして布の合わせ目を3か所、安全ピンで留めます(左右の布の端を重ねて何回か折り畳むと開きづらくなります)。
これでプライベート空間の出来上がり。

段ボールベットのパーツはシンプル

次は段ボールベッドです。
土台となる蛇腹の長さを決めるため、写真のようにパーツを並べて、長さが決まったら短いパーツで蛇腹を固定し、土台を完成させます。

最後にベッド天板になる大きな段ボールをパタパタ広げます。
そうそう、貴重品はこの蛇腹の中に置くといいみたいですよ。

この段ボールベッドは、200㎏の重量まで耐えられるそうです。
紙管間仕切りもベッドも紙製ですから、防炎でも防水でもありません。
注意しましょう。そして片づける際には、次の時の為に蛇腹まで崩さないようにしましょうね。

数はどのくらいあるの?

さて、完成したこの簡易個室。
体育館に所狭しと並べられるほどの数があるのでしょうか?
この避難所には、間仕切りが8つ、段ボールベッドが10、毛布は140枚備蓄しているそうです。
…そう、この簡易個室は体調不良者のためのものなので、すべての避難者が使えるほどの数はありません(避難所ごとに状況は異なります)。

体育館の床はつめたい

避難所に行ったらどうにかなる!そう思っている方も多いかもしれませんが、いまのところ避難者の多くは体育館の床に何かを敷いて座ることになります(ちなみに、訓練中スライドを見る時間があったのですが、体育館に座ったのは子どもの時以来。とてもお尻が冷たかったです)。

みなさん、避難所がどんなものか、イメージが湧きましたか?
どんな時にどこに避難をするか、何を用意しておいたらいいか。
備蓄の心得としては、最低三日間は自分で食べるものを用意、避難所にも持参することだそうです。もちろん常備薬などは持参です。

今回は「キホンのキ」ということでしたが、様々なことを考えさせられました。皆さんもイメージを膨らまし、そしてできるなら、自分が住んでいる地域の避難訓練に参加してみましょう。


編集後記
ナオナさんによる避難所開設訓練の体験記、いかがでしたか?

初心者の目線だからこそ、多くの人が災害に直面したときに役に立つ内容だったのではないでしょうか?
避難所設営のノウハウや設備は東日本大震災の頃と比べ改良されてきています。とはいえまだ発展途上であることも、お分かりいただけたでしょうか。

(画像:春日部市危機管理防災課)
(画像:春日部市危機管理防災課)

ちなみに、今回の訓練では資機材の組み立て訓練だけでなく、避難者受け入れの流れなどについても春日部市危機管理防災課からレクチャーがありました。このようにして訓練を繰り返し、避難所の運営ノウハウを住民が学び、実行できるようになることが、地域の防災力を高める「はじめの一歩」。

当日参加できなかった方にも知ってほしい内容です!(J:COM安心安全チーム、埼玉担当 和田)

ナオナさん プロフィール
埼玉県 春日部市在住。
イベントプロデューサー、地域コーディネーター、春日部市総合振興計画審議会委員、かすかべSDGsパートナー、J:COM安心安全サポーターなどをつとめ、地域活動を精力的に実践する整体師。ピカピカの防災士1年生!


取材協力 春日部市危機管理防災課