がれきの下から人命救助!未来のツールを紹介
J:COM安心安全チーム関西担当の中西です。
地震の死亡原因で最も多いのが、家屋倒壊による圧死や窒息死です。(参考:内閣府「防災情報のページ」)がれきの下敷きになって身動きが取れない人を救出する場合、72時間を超えると著しく生存率が低下すると言われています。今回は、下敷きになった人を少しでも早く見つけ出すためのツールを開発している大阪の企業を取材しました。
写真中央の掃除機のような見た目の機械は、がれきの下で目視できない要救助者を見つけるための「検知ユニット」と呼ばれるものです。そして写真左下のスマートウォッチのような機械は、「検知ユニット」が近づいた時に電波を発信する仕組みになっている「バンドタイプのICタグ」です。このICタグには心拍計が内蔵されていて、複数の要救助者がいる場合のトリアージ(救命の可能性が高い要救助者に優先順位をつけること)にもつながるとのこと。
「災害を見越してこのICタグを身に付けておく必要があるの?」そう思った方もいるかもしれません。実はこのシステムを開発中の企業は、すでに多くの施設やイベントなどでICタグによる所在確認サービスを展開しているんです!
自転車レースに 子どもの見守り 様々な分野で活躍
大阪市中央区に本社を構える株式会社マトリックスは、それまでは目視で行われていた自転車レースの順位測定をデジタル化するため「レース用非接触ICタグ」を世界で初めて製品化した企業です。測定の仕組みは、ICタグが一定の範囲で設定した検知エリアに入った時に、パソコン上で「どのICタグがどこを通過したかデータを取る」というもの。このシステムを応用して、現在では小学生が通学路のどの地点を歩いているのかが分かるサービスや、病院では認知症患者の無断外出、赤ちゃんの連れ去りなどを検知するサービスを提供しています。
もうお分かりとは思いますが、新しく開発している「バンドタイプのICタグ」は、地震でがれきの下敷きになる場合だけを想定した機器ではありません。企業や病院、学校などで安心安全のために普段から使っている機器に付加機能を追加したツールなんです。例えば工場が倒壊して従業員が生き埋めになっているかもしれないという場合、まず工場内に何人いたかを知ることができるため、検知ユニットを使った救助活動もスムーズに行うことができる。日常的に使っているツールが、そのまま災害時にも活用できる。これこそが「要救助者探知システム」の強みと言えるでしょう。
大阪・関西万博でお披露目!
ご紹介した機器は、来年開催される大阪・関西万博の「大阪ヘルスケアパビリオン」でお披露目される予定です。取材時点では付いていなかったのですが、検知ユニットにモニターが付いてICタグから受けた情報を画面上で見ることができるようになるなど、万博出展に向けてより良い製品へと開発が進められています!
取材協力:株式会社マトリックス