あなたの「家族」を守る準備はできていますか?Vol.4~飼い主さん同士の助け合い~
専門家の平井潤子さん(東京都獣医師会事務局長、NPO法人アナイス理事長)、ベッキーさんと一緒に「ペット防災」について考える特別企画の第四弾!(最終回)
飼い主同士の助け合いがどうあるべきか、二人に聞いてみました。※本記事の内容は2024年8月時点の情報です。
【特別企画】あなたの「家族」を守る準備はできていますか?
(全4回のラインナップ)
飼い主さん同士の助け合い(今回)
ご近所付き合いがペット防災にもつながる?
――ペット防災における「助け合い」とは何でしょうか。
平井:飼い主さん同士の助け合いですね。
一つはご近所のコミュニティにおいての助け合いです。
犬を飼っている人だと、普段の散歩などを通じてつながりがありますよね。災害時には同じ避難所に行く可能性がありますが、その際も顔見知りなので声をかけやすいと思います。
また、避難生活の中では、一時的にペットと離れなければならないケースもあります。
例えば、避難生活が長引くと、飼い主さんの中には避難所から仕事に通うという方も出てきます。朝避難所から出勤して夕方に戻るまで、ペットは避難所で留守番をすることになりますが、同じ避難所にいるご近所の飼い主さんに見守っていただいたり、お世話がお願いできたりすれば安心です。また、避難所でペットの受け入れができない場合に、普段から犬を預けたり、預かったりする練習ができていると、体制が整うまで一時的に預かってもらえますし、犬も顔なじみの飼い主さんに面倒を見てもらえるというように、飼い主同士の助け合いにもつながります。
ペットの飼育用品を十分に備蓄していたとしても、自宅が被災したら取り出すことができず、避難所に持っていけない場合もあると思います。
こんな事態に備え、近隣の飼い主さん同士で協力し、お互いのペット用品を分散して保管しておくのはいかがでしょう?
家屋の被害を免れた家で備蓄していたフードで、ペットの命を繋ぐことができるはずです。
もう一つはSNS上のコミュニティにおける助け合いです。SNSを通じて離れた場所に住んでいる飼い主さんとつながりがあれば、被災していない地域から情報提供や物資の支援をしてもらえるかもしれません。情報化社会の今だからこそ、そこでのつながりを活用してみるのもよいですね。
このように、飼い主さん同士の助け合いは、近所だけでなく、SNSを通じたスタイルもあると思います。
ベッキー:いざというときのために、人と人とのつながりや、自分のペットと他人のペットとのつながりが大切なんですね!ワンちゃんにとっても、避難所で犬の友達がいたらストレスが軽減されるかもしれないですね。
平井:そうですね。例えば、外出先で被災すると、家にいるペットが無事か不安になりますよね。でも、近所の人と顔見知りであれば、自宅が無事かどうか、外から見た様子だけでも連絡がもらえることもあります。町内会や地元の避難訓練に参加することが、ご近所さんとのつながりを作る良いキッカケになると思います。
避難所では、動物は癒しにもなるけれど「気遣い」が大切
――避難所全体がストレスなく過ごせるために、どういった心構えが必要でしょうか。
ベッキー:被災地にお邪魔したとき、ペットは避難所に入れず、飼い主と離れて暮らすと聞いて、最初は「動物たちがかわいそう」だと思いました。でも実際のところ、避難所には動物が苦手な方やアレルギーを持っている方もいます。だから、それぞれが心地よく過ごせる空間を確保しておくことで、ストレスを減らせますよね。
平井:おっしゃる通りだと思います。避難所には家族が行方不明の方がいらっしゃるかもしれないし、家が倒壊し、財産を失ってしまった方がいらっしゃるかもしれない…。災害時は普段よりもストレスを強く感じる状況があります。
今、各地の避難所で、ペットの飼い主とそうでない方が過ごすエリア分けができるように、検討が始まっている段階です。このように、双方の接点を少なくする取り組みが、お互いの理解につながるでしょう。
ベッキー:避難所で生活をする上で、人によってはペットの存在が癒しと感じる方もいると思うので、ストレスフリーで過ごせたらいいと思います。そのためには、動物が苦手な方がストレスフリーにどう過ごせるか考えることも大切ですよね。
平井:ペットが苦手な方の立場で考えるのはとても大事なことだと思います。一方で、ペットが癒しになっているのも事実で、実際にそういう光景を目にしたことがあります。避難所に人懐っこいコーギーがいて、子どもたちが交代で散歩をしていました。コーギーが子どもたちに癒しを与えているようにも感じましたね。
ベッキー:こういう話を聞くと、心がほっこりします。
――飼っていない方にどのように理解をしてもらえばいいのでしょうか?
ベッキー:飼い主は、周りへの配慮、気遣いが大事だと思います。「ペットだって私の大切な家族だから、周りは我慢してね」といった感じで強く主張されたら、動物が苦手な方は「自己中心的」だと感じます。そんなときに、「すみません。ご迷惑をおかけしないようにしますね。」という謙虚さがあれば、言われた側も少しは受け入れる気になってくれるはずです。とにかく、自分の考えを周りに押しつけず、受け入れてもらいやすい雰囲気をつくることが大事かもしれないですね。
平井:確かに大事ですよね。ただ、飼い主さんが周りに気を遣っても、それが伝わっていないこともあるようです。避難所の中でペットがいる場所や周辺を定期的に掃除したり、ペット専用スペースから人の生活エリアに戻る際に、出入り口で粘着カーペットクリーナーを使って衣服に着いた毛を取ったりするなどの配慮をしている避難所もありましたが、例えば「掃除当番表」を掲示したり、「衣服に着いた抜け毛を取ってから人の生活エリアに入ってください」と書いたポスターを貼って、配慮していることを周囲にアピールすることも大事だと感じました。
周りへの思いやりが足りないとペットと一緒にサポートを受けられなくなることも
――避難所において、飼い主の配慮の不足が招いたトラブルはありますか。
平井:新潟県中越地震の避難所で、ある飼い主さんが建物の中で犬を放し飼いにしてしまったことで、避難所を退去することになった事例があります。その犬はとても人懐っこく、子どもたちがその犬をかわいがって追いかけっこをしていました。犬が好きな方から見れば微笑ましい光景ですが、動物が苦手な方からすると不愉快に感じたのでしょうか。結局、その避難所ではペットと過ごすことができなくなりました。たまたま同じタイミングで自衛隊の方が、近くの避難所の校庭に避難者用のテントを張ってくださり、その飼い主さんと犬はそちらに移ることができましたが、そうでもなかったら居場所がなくなって、とても困っていたはずです。避難所にはいろいろな方がいますので、やはり周りを思いやる心を持つことは大切ですよね。
――反対に、助け合いで良かった事例はありますか。
平井:避難所に残されてしまった犬を、同じ避難所にいる人たちが世話をしてくれたという事例です。
これは、西日本豪雨災害に見舞われた岡山県倉敷市真備町での出来事です。当時は気温が40度近かったこともあり、熱中症で緊急搬送された飼い主さんが入院され、避難所に戻れなくなってしまったのです。それを聞いた人たちが、飼い主さんが戻るまでの間、犬の世話をしてくれたのです。こうした助け合いが自然にできる関係が良いなと思いました。
防災力と飼い主力
――対談を通じての感想をお願いします。
ベッキー:ペット防災は、日々の積み重ねが大事だと思いました。普段から備蓄する習慣をつけ避難所の確認も心がける、飼い主同士のネットワークをちゃんと築くといった取り組みが、明るい未来につながっているんですよね。ペット防災について、もっと考えたいと思えるようになりました。私自身、ペットを守る準備は万全だと思っていたのですが、まだやるべきことがあるなと感じましたね。今回は、平井先生にいろいろと教えていただいて感謝です。ありがとうございました。
平井:こちらこそ、お会いできてうれしかったです。私自身、ペット防災の活動をしていると、ペットのことで困っていらっしゃる方のことは全力で助けたいと思いますが、まずはすべての飼い主さんにご自身でできる対策を進めてもらいたいです。飼い主さんには、自身の防災力と、飼い主としての責任感を身につけていただき、自分で判断して行動に移してもらうことが、ペット防災の肝だと思います。
いつ起こるかわからない災害に備え、ペット防災を見直し&始めよう!
これまでの対談を通じて、大切な「家族」を災害から守るためには、日ごろからのしつけや必要なモノを備えておくこと、飼い主としての責任感を持つこと、飼い主同士で関係性を築いておくことの大切さを学ぶことができました。
今回の対談記事がペットと暮らす皆さんのお役に立てればうれしいです。
ぜひ、今こそペット防災をはじめましょう!
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
J:COMチャンネルでは動画バージョンを放送中!
詳しくはホームページをご覧ください。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
♥動画は↓コチラ↓からもご覧いただけます♥
【関連記事】