【特別企画】あなたの「家族」を守る準備はできていますか?Vol.2 ~3.11 あのときペットたちは…~
ペット防災について、専門家の平井潤子さん・ベッキーさんと一緒に考える特別企画の第二弾です!この企画ではペット防災の基本から過去の被災地でのできごと、日ごろの備えなどについて全4回のnote記事でお届けしていきます。
【特別企画】あなたの「家族」を守る準備はできていますか?
(全4回のラインナップ)
3.11 あのときペットたちは…(今回)
3.11 あのときペットたちは…
前回のインタビューでは、専門家の平井潤子さん(東京都獣医師会事務局長、NPO法人アナイス理事長)に、ペット防災の基礎知識を教えてもらいました。2回目の今回からは、芸能界きっての動物好きのベッキーさんにもご参加いただき、過去の災害時のペットにまつわるエピソードなどについてお聞きしました。※本記事の内容は2024年8月時点の情報です
ベッキーさんが東日本大震災で行った「支援」
――お二人は以前からつながりがあったとか?
ベッキー:先生にお会いするのは今回初めてですが、実はご縁があります。私は東日本大震災が発生したときに、被災者用と動物用にそれぞれの募金を行いつつ、動物用の支援物資も募ったんです。それを先生が活動されていた「緊急災害動物救援本部(2011年当時)」に送った際に対応していただきました。
平井:緊急災害動物救援本部では、東京に支援物資を受け取る拠点を構えており、そこにベッキーさんからたくさんの物資が届いたんです。物資の入った段ボール箱1つ1つに直筆のメッセージがあって感動しました。いただいたメッセージは写真を撮って、今でも大事に保管しています。
――災害が発生すると人への支援が中心になりがちです。なぜベッキーさんは動物への災害支援を行ったのでしょうか。
ベッキー:もちろん被災地に住んでいる方たちの心配もありましたが、家族の一員である犬や猫といった動物たちのことも気がかりになり、「大丈夫かな? ごはんはあるのかな?」と思いました。それと同時にペットの支援が少ないことに疑問を持ったのを覚えています。
ペットへの支援活動に対しては、いろいろなご意見があるとは思いますが、私にとってペットを守るのは当たり前のことなんです。震災後にペットのことで、いてもたってもいられなくて、支援活動を行ったところ、予想以上に多くの方に来ていただけました。
「ペットへの支援活動を行ってくれてありがとう」と声をかけていただいたときは、「みんなもペットの支援をしたかったんだ」と気づき、勇気づけられました。
被災地で見たペットたちの状況
――被災地でのペットの置かれた状況を見て、どのように感じましたか。
ベッキー:私は東日本大震災が発生したときに、避難所を訪問させていただきました。皆さんが大変な生活をしているのを目の当たりにしたことで悲しみに打ちひしがれたとき、犬といったペットがいないことに気づいたのです。そこで被災者の方々にペットについて尋ねたところ、「家に置いてきた」「車の中にいる」という答えが返ってきました。
当たり前かもしれませんが、災害が発生したら、まずは人命が優先で、ペットは二の次になってしまいます。とはいえ、被災した方も辛い状況に置かれているので、ペットのことまで手が回りません。ただ、家族の一員であるはずのペットが家に置かれてしまうことには、とても違和感を抱きました。
平井:東日本大震災のときは、あまりの被害の大きさに現地入りして茫然自失となってしまい、何から始めていいかわからない状況でしたね。
また、福島第一原子力発電所の事故発生の影響も大きく、被爆のリスクがある中で計画的避難区域に残されたペットをどう保護するかということは、災害時における新たな課題となりました。ペットを計画的避難区域に置いていかざるを得なかった飼い主さんたちのことを思うと、非常に心が痛んだのを覚えています。
現在のペット防災と、支援の「気づかい」
――ペット防災は進歩しているのでしょうか。
平井:進歩しているのは確かです。東日本大震災の後に、環境省が『人とペットの災害対策ガイドライン 』を策定し、各地方自治体にペットの同行避難を想定して備えることを働きかけています。
そうはいっても、災害の規模、避難者数、人口密度などによって避難所の運営方法は変わりますから、すべての地域でスムーズに進んでいるとは言い切れません。例えば、地方であれば、自宅が壊れていなくても、被災者が不安を感じれば物資と情報を得るために避難所に滞在できるケースもあります。一方で、人口の多い都市部であれば、人数オーバーで避難所に入りきれない可能性があり、在宅避難の備えを呼びかけています。ペットの同行避難対策を行わないと、飼い主さんもリスクが生じることは認知されつつあるので、少しずつガイドラインに沿った取り組みが始まっていると感じています。
ベッキー:環境省のガイドラインには、自治体でペット用品の備蓄に関する指針は記載されていますか?
平井:ガイドライン(指針)ですので、備蓄を強制する文言はありませんが、すでに備蓄を始めている地方自治体もあります。ただ、地方自治体が備蓄をしたとしても、その地域の全ての犬や猫の用品を賄うことはできません。
また、2024年1月に令和6年能登半島地震が発生したときには、後方支援としてペット業界団体で組織されている「ペット災害支援協議会」や公益社団法人日本獣医師会などが支援物資を被災地に送ろうとしたのですが、陸路が途絶えている状況で、誰がどのように運び、どこに置き、どのように配るのかということが課題として挙がりました。支援者の初動が早くても、すぐに支援物資が届かないこともあります。
――ベッキーさんは、現地の負担を考えて支援物資を種類別に箱を分けたそうですね。
ベッキー:はい。「物資をとりあえず送る」という気持ちで突っ走っても、受け入れ側に迷惑をかけてしまうと思います。皆さんから支援物資をいただいてから、支援先に受け入れの確認をしたり、送る予定の物資の量を事前に連絡したりと、密にコンタクトを取りながら送ったのを覚えています。
――最近は災害支援の方法も変わってきたと聞いています。
平井:そうですね。東日本大震災のときに、ベッキーさんが物資の種類を分けて送ってくださったのは、本当に助かりました。その当時、物資の集積所になっていた場所には全国から毎日のように物資が届きましたが、中には1つの段ボールにあらゆる種類の物資が詰められたり、賞味期限が過ぎたものや開封済のものが入っていたりすることもあったのです。それらを仕分けするのには手間がかかり、使えないものを処分するにもお金がかかるので、非常に苦労しました。すべての方がベッキーさんのように仕分けをした状態で送ってくださるのであれば助かるのですが、実際のところ、なかなかうまくいきませんでした。
また、近年ではSNSを使用した支援も行われていて、良い面もあれば、うまくいかない面もあります。2016年に発生した熊本地震では、ある避難所がSNSで必要な物資の情報を投稿すると、それが広範囲に拡散され、物資が十分に足りた後も送られ続けることもありました。支援物資といっても被災地のニーズにそぐわないケースもあるため、最近では、そのときに必要な物資を聞き出してから、まず企業や支援団体などから物資を提供いただき、被災地に届ける方法がとられています。個人に対しては、インターネットの通販サイトを活用したり、特定の物資を指定して支援いただくなどの方法が傾向だと感じます。
ただ、東日本大震災のときは被害が甚大で、企業や支援団体に支援物資を働きかけても追いつかないケースもありました。あまりにも被害が大きいときは、個人が物資を調達し、自力で届けるという支援方法も必要になると思います。また、個人からの支援物資も、ベッキーさんのような物資を種類別に分けて送るというお気づかいがあれば、小さな支援団体や個人で活動をしている人にとって助かるでしょう。
――のちに被災地を訪問し、現地で気づけたことはありますか。
ベッキー:ゴミ袋が不足していました。ただ、ペットシーツを送るだけではなく、使用後の処理までを考えて物資を送る方が良いと気づきましたね。
被災者になっても、誰かを支援する側になっても
お2人の対談を通じ、ペットの災害支援にも少しずつ変化が見られていることがわかりました。しかし、ペットに限ることではありませんが、大きな災害が発生すると、すぐには十分な支援を受けられない場合がほとんどです。
もし自分が被災者になったときには、誰かの助けがなくても「家族」を守れるように備えておくことが大切ですね。
また災害が起きたけれど自分は無事だったときなどには、ペットを飼っている人同士だからこそ支援できることがきっとありそうですね。ただし、相手の状況を考えて適切な方法で支援することも重要だと教えてもらいました。
平井潤子さんとベッキーさんの対談記事は、あと2回!
次回は「日ごろの備え」をテーマに、あったら便利なモノや準備しておきたいコトについて考えます。ぜひお楽しみに!
(追記:公開しました→続きはこちら)
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