【特別企画】あなたの「家族」を守る準備はできていますか?Vol.3~日ごろの備えとあると便利なアイテム~
ペット防災について、専門家の平井潤子さん、ベッキーさんと一緒に考える特別企画の第三弾です!今回は、ペットの災害対策をより実践的に考えていきます。備えておきたいアイテムや飼い主さんが日ごろから対策しておきたいことをご紹介します。
【特別企画】あなたの「家族」を守る準備はできていますか?
(全4回のラインナップ)
日ごろの備えとあると便利なアイテム(今回)
日ごろの備えとあると便利なアイテム
前回の対談では、被災地で起きていた悲しい現実と、普段から備えておくことの大切さを学びました。被災したペットへの支援は進んでいても、自分で備えておくことが大事なんですね。では具体的に、どういった備えが必要なのでしょうか?引き続き、専門家の平井潤子さん(東京都獣医師会事務局長、NPO法人アナイス理事長)、ベッキーさんにお聞きしました。※本記事の内容は2024年8月時点の情報です。
ペットが安全に過ごせる場所を家の中に作っておこう!
――近年、災害が相次いでおり「同行避難」と「同伴避難」という言葉が聞かれるようになりました。この2つの違いについて教えてください。
平井:同行避難とは環境省が定義している言葉で、ペットと一緒に危険な場所から安全な場所に避難する「避難行動」のことを指します。災害の種類によっても避難先は異なりますので、津波が来る際に海に近い避難所ではなく高台の公園に避難する場合もあるでしょうから、必ずしも同行避難の行先は「指定避難所」とは限りません。
「同伴」という言葉は内閣府が避難所運営ガイドラインの中で使用していて、避難した場所に飼い主さんもペットも一緒にいる状態を指します。飼い主さんやペットがいる場所を、屋外や屋内と限定しているわけではありません。
最近では、室内同居のことを同伴避難と捉える方もいるようですが、内閣府の定義では、避難所(敷地)の中にペットもいるといった状態を表す言葉ですので、解釈の違いが、今後避難所運営上のトラブルの原因にならないように、と心配しています。
――在宅避難をするときに気をつけることは何でしょう
平井:避難所での生活はペットにとってもストレスがかかるものです。飼い主さんが自宅の災害対策を強化して、在宅避難を選択できるようにしておくのもいいと思います。ただし、在宅避難では、家が安全であることが前提です。
これからペットの災害対策を始める方は、家の中にペット用のシェルターとなる場所、例えば一定の強度がある安全なケージやハウスなどを用意しておくといいですね。震災時、ペットが自らそこに逃げ込んでくれさえすれば、助かる可能性が高まります。ベッキーさんのおうちのペットは嫌がらずにハウスに入りますか?
ベッキー:うちのペットは、あまり嫌がることもなく入りますね。
平井:ケージやハウスに入ることを習慣づけておけば、そんなに嫌がらないですよね。2007年に発生した新潟県中越沖地震では、普段からハウスに入るトレーニングをしていた生後5カ月のプードルが、揺れと同時に頑丈なハウスに飛び込んでくれたおかげで家具の直撃を避けられて助かったという実例もあります。
――ケージに慣らす以外に、どのようなしつけをすべきでしょうか?
平井:普段から「○○ちゃん、おいで」と呼び寄せることができていると、素早く呼び寄せてリードをつけたり、震災時の揺れでパニックになった犬が怪我をしないように抱きかかえて守ってあげられます。そして、いろいろな人とふれあい、慣らしておくことで、迷子になったときも保護してもらいやすくなります。
ベッキー:海外に行ってすごく驚いたのが、飼い主がスーパーのお買い物など、いろいろなスポットに犬を連れて行くことです。日本でも、海外の飼い主さんのしつけに対する意識を見習いたいですね。やはり、いつ何があるかわからないので、ペットのしつけを普段からきちんとする、いろいろな環境に慣れさせておくというのは、ものすごく大事だと思います。
備えておきたいペット防災アイテム
――災害に備えて、ストックしておくとよいペット用品はありますか?
平井:ペットの種類や習性、その子の好みによって用意するべきものは異なりますが、絶対に必要なものは水とフードです。特に病気治療中のペットであれば、療法食の備蓄も必要です。
過去の災害を振り返ると、食欲不振に陥るペットが一定数いました。そういった事態に備えて、水分補給を兼ねたウェットタイプのフードや嗜好性の高いおやつを用意しておくのもいいと思います。
また、避難所内でトラブルを減らすためには、臭いを防ぐ意識も大切です。大型犬のオスは体臭が出やすいので、ドライシャンプー、消臭剤、ウェットティッシュなどを用意しておくと、周りへの配慮にもなります。
ベッキー:私はそもそもストックするのが好きなので、数カ月分のフードやペットシーツを用意しています。もちろん、それ以外にも消臭スプレーや、排便を入れる袋など、日常的に使うものもストックしています。自宅にはペット用品をまとめたスペースがあり、災害時はそこにあるものを大きなバッグに詰め込んで避難しようと思っています。
この先、何が起こるかわかりません。だからこそ「何が起きても大丈夫」というスタンスで日ごろから備えています。
――今日は、さまざまなグッズを揃えてみましたが、備えておくと良いもの、気になるものはありますか?
平井:(伸縮包帯を指して)瓦礫(がれき)の中を歩いて避難するときに、犬に靴を履かせることもできますが、普段から慣らしておかないと嫌がると思います。靴の代わりにバンデージなどを犬の足先に巻くのも一案ですが、粘着性がありますので、ガラスの破片や金属がくっつかないように、接地面を砂などでこすって粘着力を落としておくよう注意してください。
ベッキー:東日本大震災後に支援物資を募ったときに、フードとペットシーツだけではなく、おもちゃも集めました。災害時はペットもストレスがたまると思うので、発散するためのアイテムも大事ですよね。
――別の用品をペット用品に代用することもできるのですね。
平井:私たちが日常生活で使っているアイテムも、見直したらペット防災に役立てられるものがあります。意外に役立つのがキャンプや山登りで使うアイテムです。今は、ワンタッチで広がるテントがありますね。
ペットの室内同居ができなかった避難所内でも、室内にテントを張り、テント内であれば小型犬と猫に限り飼育が許可されたケースがありました。テントを持っていけば、室内同居を交渉する材料にもなります。避難所で猫をキャリーバッグの中にずっと入れておくのは難しいと思うので、猫と暮らしている方にはテントがおすすめです。
ベッキー:うちもキャンプ用のちょっと大きめのテントがあるので、いざとなったら、家族みんなでしばらくはテントで暮らそうと考えていますね。
飼い主の安心につながるマイクロチップ
――しつけ、用品をそろえることのほかにできることはありますか。
平井: 被災地での活動の経験からは、2つお話したいことがあります。1つは犬に関しての話です。今では室内飼育が多くなり、リードなどでつながれることに慣れていない犬もいます。
また、避難先では飼い主と離れ、たくさんの知らない犬に囲まれたり、余震が続くことで不安になった結果、繋いであったリードを咬みきって逃げたりしたケースもあります。ワイヤー入りや丈夫なハーネスなども用意しておくといいでしょう。
もう1つが、ペット用のマイクロチップ(※)の装着です。
東日本大震災のときに、首輪の跡が残っていた犬を複数保護したことがありました。おそらく放浪期間が長くて、首輪が抜けてしまったのだと思います。犬が行方不明になった被災者の中には「どこで何をしているかわからないのが一番つらい。死んでいてもいいから、それを知りたい」と話してくれた方がいました。
皮下に埋め込むマイクロチップに違和感を覚える方もいると思いますが、愛するペットと自分を繋ぐ命綱としても、迷子対策の選択肢の1つとして考えていただきたいですね。
ベッキー:マイクロチップがあるなんて、すごい時代になりましたね!
(※)マイクロチップ:動物愛護管理法で令和4年6月より店舗やブリーダーから販売される犬・猫への装着が義務付けられた
詳細情報 犬と猫のマイクロチップ情報登録 | 環境省
この子に必要なモノ・コトって何だろう
今回のお二人の対談では、あると便利なグッズをたくさんご紹介しました。新しいグッズを揃えたら、一度食べさせたり、使ったり「お試し」してみるのもいいですね。また、いろいろな環境に慣れさせておくことも、災害時のストレスを和らげる訓練になるんですね。ペット用品の備蓄、しつけの両面から「備え」を見直してみましょう。
平井潤子さんとベッキーさんの対談記事は、早いものであと1回!最終回は「助け合い」がテーマ。過去の災害現場で実際にあった様々な助け合いのカタチから、今私たちができることを考えます。さて、ベッキーさんが大切な「家族」を想い感じたこととは?最終回もお楽しみに!
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