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【特別企画】あなたの「家族」を守る準備はできていますか?Vol.1 ~ペット防災ってなに?~

災害は、いつ・どこで起こるかわかりません。被害を軽減するためには日頃からの備えが重要で、これは大切な家族であるペットを守るためにもいえることです。

また今日9月1日は「防災の日」ですが、9月7日は「ペット防災の日」です。そこでJ:COM地域取材ノートでは、この機会にみなさん自身の備えやペットの安心安全についても考えていただこうと「ペット防災」をテーマにした特別企画を行います!

この企画では、専門家の平井潤子さんと、芸能界きっての動物好きとして知られるベッキーさんにご参加いただき、ペット防災の基本から過去の被災地でのできごと、日ごろの備えなどについて対談インタビューを実施!その内容を全4回のnote記事でお届けしていきます。

【特別企画】あなたの「家族」を守る準備はできていますか?
(全4回のラインナップ)

  1. 「ペット防災」ってなに?(今回)

  2. 3.11 あのときペットたちは…

  3. 日ごろの備えとあったら便利なアイテム

  4. 飼い主さん同士のたすけあい(9月21日公開予定)

『J:COM地域取材ノート』の特別企画

ペット防災ってなに?

第一弾のテーマは「『ペット防災』ってなに?」。災害からペットを守るための基本について、専門家の平井潤子さん(東京都獣医師会事務局長、NPO法人アナイス理事長)に伺いました。※本記事の内容は2024年8月時点の情報です

人とペットの災害対策ガイドライン」(環境省HP)

ペットの防災はいつから始めれば良い?

2007年新潟県中越沖地震の際に救助された猫(画像提供:NPO法人アナイス)

――災害時、飼い主はペットに対してどのような責任があるのでしょうか?

平井:災害時における飼い主の責任は3つです。まず1つは、飼い主自身が生き残らないとペットを救えないので、自分自身の命を守る責任があります。2つ目はペットを守る責任、いざというときに大切なペットをどのように守るのか普段から危機管理の意識が重要です。そして、もう1つは社会に迷惑をかけないようにする責任です。

過去の災害では、飼い主と離れ離れになってしまったペットたちが、さまざまなトラブルを起こした事例があります。このような背景もあり、飼い主がペットと一緒に避難するために準備しておくことは、ペットが周りに迷惑をかけない対策にもつながるのです。

――ペット防災は、いつから始めたらよいのでしょうか?

平井:ペット防災は、普段から意識して生活することが大切です。例えば、毎日の散歩などで周りとのつながりを持たせるといった、日常の社会生活に適応できるためのトレーニングを行うとよいでしょう。ペット防災は、家族として迎え入れた時点から始まっていて、災害が起きて初めて人や他の犬、猫などの動物に慣れさせようと思っても難しいと思います。

災害が起きた場合、人見知りをするペットであれば、なかなか保護してあげられない、あるいはシェルターにペットを預かってもらっても散歩に出せないということが起こり得るのです。このような事態を防ぐためにも、普段の生活から周りになじむよう「社会化」を意識することで、ペットが災害時に受けるストレスの軽減につながるでしょう。

――反対に、ペット防災のゴールはあるのでしょうか?

平井:被災の規模によって、状況が変わることはありますが、災害以前のように、飼い主とペットが一緒に落ち着いて暮らせる生活を取り戻すことがゴールではないでしょうか。

どの災害でも、飼い主を一番悩ませるのが、ペットと一緒に過ごせる場所の確保です。自宅は被害に遭って住めない、避難所にも入れないとなると、それ以外の居場所が必要になります。普段から、災害時にペットと一緒に過ごすことができそうな避難場所をいくつか見つけておくとよいですね。

ペット防災はなぜ必要?

平井潤子さん(東京都獣医師会事務局長、NPO法人アナイス理事長)

――ペット防災が必要な理由を教えてください。

平井:ペット防災といっても、ペットを守ることに限った話ではありません。まずは飼い主がペットの避難の準備を整えておかないと、飼い主が危険な自宅にとどまったり、あるいは一旦避難はしたものの、自宅に戻らなければならなかったりすることがあるでしょう。災害では生き残れた飼い主でも、避難所と危険な自宅の行き来などで余震といった二次被害に遭うリスクが高まります。そういった観点からもペット防災を考えておくことが大切です。

――ペットの避難対策をしていなかったことで起こり得るトラブルには、どういったものがありますか?

平井:過去には避難の際に同行できなかったペットを助けるために、危険な場所に飼い主が戻ってしまったり、犬たちが残された地域で群れて行動したり、無人になった家に入って排泄してしまったり、屋内で死亡してしまっていたり、というトラブルがありました。

2011年東日本大震災の際に宮城県の避難所で生活する犬(画像提供:NPO法人アナイス)

避難所では、犬の性格や、しつけができていないことに起因するトラブルも起こりますが、もう1つ盲点があります。私たちはこれまで、避難所で暮らす“動物が嫌いな人”や、“動物に由来するアレルギーを持つ人”に対して迷惑をかけないように、いかにペットと接触させないようにするかを考えてきました。そういった人々は、避難所に動物が居ることに対して苦情を言っても、自ら動物に近づいて何かをすることはありません。

しかし、実は動物好きな人がトラブルの原因をつくってしまうことがあります。例えば、ペットに与えてはいけない食べ物を与えたり、ケージの扉を開けて逃がしてしまったりといったトラブルがあるのです。動物が嫌いな人やアレルギーを持っている人への配慮が必要なことは間違いありませんが、好きな人への対策も必要です。災害時のトラブルは動物そのものが原因になるトラブルもあれば、人が原因になるものもあります。過去にどのようなトラブルが起こったかを知り、それをいかに避けられるかを考えておくことも、大事だと思いますね。

――過去に起こったトラブルの情報はどのように収集できますか?

平井:日本で大きな災害が発生すると、収束後に報告書が作成されています。その報告書は環境省や地方自治体のホームページ上などで閲覧できますので、避難所で起こったトラブル事例を見ることが可能です。また、2024年1月に発生した令和6年能登半島地震では、今までにないスピードで民間のボランティア団体が現地に入り、リアルタイムでSNSやホームページで情報発信をしていました。そういった情報を得ることも、備えにつながると思います。

これから準備をする人は何から始めるべきか

ローリングストックのイメージ

――ペット防災は、何から始めるとよいでしょうか?

平井:ペット防災には、ハード対策とソフト対策の2つがあります。ハードの対策としては、フードやお水のストックが挙げられます。治療中のペットであれば、処方食や医薬品の備えが必要です。

これまでは、ペットの物資のストックの目安は3日分とか一週間分などといわれていましたが、大規模災害のことを考えると1カ月分以上をストックしておくといいでしょう。もし大きな災害が起こると、人への支援物資ですら遅れる可能性があるわけですから、ペットの支援物資が届くのはさらに遅れます。ただし、1カ月間の災害用のストックに捉われるのではなく、長い目で見てローリングストック(※)をしておけば、消費期限をあまり気にせずに済むので、取り組みやすいと思います。

ソフトの対策でいえば、日頃の健康管理や鑑札の着用、マイクロチップの導入などの迷子対策もありますが、まずは先ほど少し触れた通り、ペットとの居場所の確保から始めるといいでしょう。

――ペットが避難所に入れない場合に、選択肢として他に行ける場所はありますか?

平井:実家、親戚の家などもありますが、日常のネットワークに頼るのも有効です。例えば、犬を飼っていると、散歩の途中によく顔を合わせる犬と飼い主さんがいると思います。そういった人々とネットワークをつくって、犬を預けたり、預かったりして普段からショートステイの練習をすることで、一時的にでも犬の居場所を確保することができるでしょう。また、在宅避難も居場所の1つとして挙げられるので、自宅の耐震対策、防火対策なども備えになります。

(※)ローリングストック:日常的に使う食品や生活用品を少し多めに購入し、古いものから消費しながら定期的に買い足すことで、常に一定量の備蓄を確保すること

普段から備えることで、ペットも自分の身も守れます

いざというときにペットを守るためには、やはり人の命を守ることが先決であり、日頃からの備えが大切だとわかりました。ペットの防災を意識することで、飼い主さんの安心安全にもつながります。これからペット防災に取り組まれる飼い主さんは、居場所の確保やローリングストックの2つから実践するとよいのではないでしょうか。

次回は芸能界きっての動物好きで知られるベッキーさんが登場!2人が東日本大震災の被災地で見たペットたちのエピソードなどを交え、日ごろの備えの大切さについて考えます。ぜひお楽しみに!(2024年9月7日公開済)

第二弾からはベッキーさんが登場!

↓第二弾を公開しました(追記)

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取材協力:WANCOTT
制作著作:J:COM